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庭師 古川乾堤

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2007/10/18
庭師 古川乾堤
アート活動も活発に行う庭師 古川乾堤インタビュー
日本を飛び出したことで「庭師」を決意
庭師 古川乾堤

身近すぎて顧みられること少ない「庭」という存在。そんな「庭」の魅力に取り付かれた庭師がいるという情報をキャッチした取材班は、愛知県一宮市にクルマを飛ばした。彼の名は古川乾堤。m28e有限会社の取締役親方である。

― すごく赴きのある日本家屋ですが、ここが古川さんのお仕事場なんですね。

【古川】 ここ本当は取り壊される予定だったんですよ。不要になった庭石を貰うためにやってきたらこの佇まいでしょ。一発で惚れ込んでしまって…。

― ええ。ここが取り壊しの危機にあったんですか!?もったいない!

【古川】 そうでしょ。ここがコンビニや携帯ショップになるのは耐えられなかったんで、無理を言って仕事場としてお借りすることにしたんです。

― うん、それ大正解だと思います!そんな古川さんが「庭師」として独立するまでにはどんな経緯があったんですか。

【古川】 俺、もともと日本が嫌いだったんですよ。

― !?それはまた意外なことをおっしゃいますね。

【古川】 日本特有のドロドロした雰囲気とか、ジメッとした感じが好きになれなくて…。若い頃はアメリカやらイギリスの文化に惹かれてましたね。だから日本を飛び出してヨーロッパをふらふらと放浪していたんです。でも行く先々で日本のことを根掘り葉掘り聞かれるんです。

― 日本がイヤで飛び出したのにですか(笑)。

【古川】 ヨーロッパ圏の人たちにとって、日本って「カッコいい」対象だったんですね。「自分はいい所に生まれたんだなー」ってのを外国人に教えてもらったようなもんです。そんな時イギリス人の友達ポールが、自分のプライベートジャパニーズガーデンを見せてくれたんです。鶴と亀の変な置物や、所々無造作に転がっている石…ポールは「本物の日本人に作ってもらった!」と自慢してましたが、その時「おい、おい。ニホンこんなんやと思われてるよ」と同時に「本物やったらもっと儲かるな」という思いがフツフツと沸いてきて、庭師になったろう!と思ったんです。

― ポールの変庭がなければ、古川さんが庭師として活躍することもなかったんですね!

【古川】 確かに(笑)。まぁそれで日本に帰ってきたんですが、庭師の知り合いなんていませんから、図書館でタイトルに「庭」って書いてある本を借りまくったんです。そういう本には何故か必ず著者の住所が書いてあったんで、片っ端から手紙を書いて「会ってください!」と。またみんないい人で会ってくれるんですよ!で、そうして知り合った長野の庭師さんに弟子入りをして、そこでみっちり4年間修行をさせてもらいました。

自然と共に歩むことが庭造りにつながる
庭師 古川乾堤
― そこを辞められてからはスグ独立されたんですか。

【古川】 いや、半年かけて沖縄から東京まで歩いて旅をしました。

―ええええ。またなんで!?

【古川】 庭、庭って言ってても、自然を相手にすることのスケール感をまだ肌で理解していないような気がしたからですね。実際に歩いて旅をして、初めて気付いたこともたくさんありました。例えば街道沿いに1日歩き続けると、ちょうど次の街に着くことができるんです。2日に1回は温泉に入ることもできましたし。

― 人の歩く距離を基準に街作りが行われていたことの証明ですね。

【古川】 下り坂でも足を前に出さなければ進むことができないというのも新鮮な驚きでした。どんなに疲れていても、歩き続けなければ決して先に進むことはできないんです。今の人間は、長生きかもしれないけれど、自然と共に歩むことの意味を完全に失ってしまっている気がしますね。

― 「自然と共に歩む」というのが古川さんの庭造りに対する姿勢なんでしょうか。

【古川】 うん。俺の庭造りは、他の庭師さんのように無理に形を整えたりはしないんです。その木がなりたがっている自然か形に戻してあげるように木を剪定していく。心地良くしてあげると木の方もそれに答えてくれるんです。人間と同じように木にも意思がありますからね。

頭にかぶる庭「冠庭」でGEISAI金賞受賞!
庭師 古川乾堤
― 庭師として活躍する傍ら、アート活動も活発に行われていますが、そのきっかけは。

【古川】 庭師仲間と飲んでいた時に「俺たちのやっていることってアートなのかなぁ」という疑問が沸いてきたんです。彫刻はアートと言われるじゃないですか。だったら庭造りもアートじゃないかって…。でもその場では結論がでなかったので、東京のアートイベントGEISAIに参加したんです。庭がアートかどうかって、GEISAIのお客さんの反応を見たらわかるんじゃないかと思ったんですよ。

― そのGEISAIで、金賞を受賞されたわけですが。

【古川】 どうやら、俺たちのやってることはアートらしいです(笑)。その時にGEISAIに出展したのが、頭にかぶる庭「冠庭」でした。

― この冠庭はどういう着想で制作されたのですか。

【古川】 ビルの上に、屋上庭園を造るのは大変だけど、人がかぶる庭なら造るのも簡単…ってところですかね。普段仕事で造っている庭を、頭の上に載せただけなんですよ。

― 普段の仕事が、そのまま作品づくりに活きた形ですね。ところで、仕事での庭造りとアート作品の制作、気持ちの面での違いはあるのですか。

【古川】 うーん。仕事も作品づくりも、同じ「物づくり」ですから。気持ちの面ではあまり差はないですね。

― へー。そうなんですね。では、仕事と作品づくりをひっくるめた「物づくり」をする上での苦労などあれば聞かせてください。

【古川】 自分が考えたアイデアを、うまく実現する技術がないことは歯痒いですね…。でもね、どんなに難しいと思っていたことでも、切羽詰まると案外できちゃうもんなんです。そんな時は自分で興奮してしまうんですが、その興奮はお客さんにも伝わるんですよ。だから苦労をすればするほど、達成感がでかい。俺にとっては「苦労=面白さ」ってとこがありますね。

クリマでは見てくれる人と一体化して一緒に楽しもう!
庭師 古川乾堤
― なるほど…それは、日々創作を続けている古川さんならではのお言葉ですね。さて、そろそろこのインタビューもおしまいの時間ですが、最後にこれからクリマに出展するという方へアドバイスなどあればお願いします。

【古川】 見てくれる人と一体化して、一緒に楽しんじゃえ!ってことですかね。発信者である自分とお客さんとの間に線を引くことをせず、一緒に盛り上がっちゃいましょうよ。ブースいっぱいに作品を詰め込むのもいいけど、自分のブースにお客さんを引き入れて、その場で一緒に作品を完成させるのも楽しいと思うんです。完成品を持ってきて展示するのではなく、会場で作品をお客さんとつくりあげる。それによって「次は出展してみたい!」って感じるお客さんも出てくるはずですし。

― うん確かに!それは出展者とお客さんの理想的なサイクルですね。今日は面白いお話をいっぱいありがとうございました。

【古川】 こちらこそ、ありがとうございました。

とにかくエネルギッシュな古川さん。会話の端々からも「庭」や「自然」に対するこだわりがうかがえました。特に感銘を受けたのが「冠庭」の着想。庭は個人でも持てる!というのは目からウロコの考え方でした。

(Interview:かすやかずのり)
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profile

庭師 古川乾堤

庭師 古川乾堤

1972 愛知県生まれ
1987 背泳ぎで全中出場
1988・90 背泳ぎでインターハイ出場
1993 ヨーロッパを1年ぶらつく
1995 愛知学院大学商学科 卒
1999 コテコテ日本庭園修行 終了
2000 沖縄から東京まで野宿で徒歩一人旅
2001 m28e☆エム・ニジュウハチ・イー 設立
日夜「アナタの顔のように世界に2つとナイ庭」を創るかたわら GARDENとARTを融合させた【GARTDEN】を提唱。
古来より伝わる日本庭園の技術・文化を武器に、アートパフォーマンス、空間演出、インスタレーションなど多岐にわたる活動を続ける

HP: http://m28e.jp
BLOG : http://m28e.blog.shinobi.jp/